子どもの頃の私は、好き嫌いがとてもはっきりした子でした。好きなことには夢中になるのに、興味がないことにはびっくりするくらい無関心(笑)。週5日も習い事をしていたのに、全部が好きだったわけではありません。器械体操、ピアノ、公文、書道、英語、新体操、絵…。その中でも器械体操はなかなか本気でした。兄の付き添いで通い始めた教室で「運動神経がいいね」と言われ、気づけば選手育成コースへ。バク転なんて何回でも回れたし、バク宙も飛んでいました。…が、ある日、見事に頭から落ちました(笑)。そこから急に怖くなってしまい、バク転さえできなくなって、そのまま卒業。人生って、そんなもんです。ピアノもなかなかスパルタでした。先生からは「指のまたを切ればオクターブ届くわよ」と本気で言われ、母と「どうする?」と真剣に悩んだこともあります(笑)。もちろん切りませんでした。でも、練習した分だけ弾けるようになるのが嬉しくて、小学生でショパンの『幻想即興曲』を弾いていましたね。今思えば、あの頃から「好き」と「積み重ねること」はセットだったのかもしれません。でも、本当の意味で「好き」を知ったのは、小学校中学年の頃でした。おばあちゃんと買い物へ行った日のことです。いつも洋服は母が選んでいましたが、でも、その日は違いました。「好きなの選んでいいよ。」そう言ってくれたんです。白の水玉と、色違いの緑の水玉のスカート。どっちも可愛くて選べなくて、結局どっちも買ってもらいました(笑)。あの日、自分で選んだスカートを履いて出かけた私は、それはもう誇らしくて。「あぁ、自分で選ぶってこんなに楽しいんだ。」その気持ちは、今でもちゃんと覚えています。※ 写真はイメージですインテリアの仕事をしている今、私はお客様にあまり「こちらがおすすめです」とは言いません。その代わりによく言うのは、「私これ、めっちゃ好きなんですよ。」とか、「これ、かっこよくないですか?」そんな言葉です。まずは自分の「好き」を差し出してみる。すると不思議なことに、お客様も安心して、「私はこんな感じが好きかも。」と話してくださるようになります。インテリアを選ぶ時間は、家具を選ぶ時間ではなく、自分の「好き」を見つける時間なのかもしれません。思い返せば、あの日のおばあちゃんも、私に同じことをしてくれていました。「どっちが好き?」たったその一言が、私に「選ぶ楽しさ」を教えてくれたのです。独立したばかりの頃は、自分の感覚にまったく自信がありませんでした。「この提案でいいのかな。」「この色で喜んでもらえるかな。」毎回ドキドキ。でも、ある日、お客様から言われたんです。「森田さんが言うなら安心ですね。」その一言が、本当に嬉しくて。「あ、私の『好き』を信じてくれる人がいるんだ。」そう思えた瞬間でした。そこから少しずつ、自分の感覚を信じられるようになった気がします。もちろん、最初から仕事がたくさんあったわけではありません。一つひとつの仕事に夢中になって、「どうしたらもっと喜んでもらえるかな?」を考え続けてきました。そうしたら、仕事がお客様を連れてきてくれるようになりました。ありがたいことに今では、お待ちいただくこともあります。…とはいえ、毎日馬車馬のように走り回って、「今日も24時間じゃ足りない!」とヒーヒー言っています(笑)。でも、その忙しさも、目の前の仕事を大切にしてきた結果なんだと思うと、不思議と嫌じゃありません。2020年、コロナ禍で仕事も少なくなり、不安な毎日を過ごしていた頃。思い切って、限定カラーのグロッシーネイビーブルーのYチェアを買いました。正直、お財布には優しくなかったけど(笑)。でも、家に帰ってその椅子を見るたびに、少しだけ気持ちが明るくなりました。今でも一番好きな家具です。好きな家具は、暮らしを変えてくれる。というより、「今日も頑張ろう。」そんな気持ちを、そっと支えてくれる存在なのかもしれません。だから私は、家具は一気に揃えなくていいと思っています。少しずつ。自分の好きなものを迎えていけば、おのずと好きな空間になるはず。それで充分、それが最高!インテリアは、完成させるものではなく、育てていくものだから。15年以上、私はほぼ毎日、お風呂上がりにブリッジをしています。何か劇的な効果があったかと言われると…正直よく分かりません(笑)。でも、無駄だったとは思えず、きっと何かの役には立っているはずと信じています。人生も同じだと思っています。好きだったこと。夢中になったこと。失敗したこと。遠回りしたこと。全部、どこかでちゃんとつながっています。だから、焦らなくて大丈夫。好きなことを続けていると、その延長線上に、思いもしなかった景色が現れることがあります。私にとって「GIFT」は、誰かに贈るプレゼントという意味だけではありません。「好き」に出会えたこと。「好き」を信じてもらえたこと。そして、「好き」を仕事にできたこと。そんな人生から受け取った贈り物、そのものです。だから今日も私は、お客様に聞きます。「どっちが好きですか?」その答えの中に、その人らしい暮らしがきっとあると信じているから。