「最近、パートナーがなんだか冷たい気がする」「よかれと思ってやったのに、なぜか怒られてしまった」「自分なりに頑張っているのに、妻はいつも不満そう」ひとつでも心当たりがあったら、少しだけ立ち止まって、お付き合いください。この文章は、いま子育ての真っ最中で、ちょっとだけ疲れているパパへ向けて書いたものです。はじめまして。NPO法人ファザーリングジャパン沖縄の玉那覇と申します。二人の子どもを育てた経験と、十年以上にわたって沖縄県内の自治体や企業で「男性の子育て講座」を続けてきたなかで、たくさんのパパの本音と、その隣で踏ん張るママの声に耳を傾けてきました。そこで気づいたのは、たったひとつ。悩んでいるのは、あなただけじゃない。子育てに正解はありません。でも、ちょっと知っているだけで、ぐっと肩の力が抜けることはあります。同じように悩みながら歩いてきた、ひとりの父親からの「ヒント」だと思って、読んでもらえたら嬉しいです。「子育て」って、なんだろう辞書で「子育て」を引くと、「子どもを養い育てること」と出てきます。ずいぶん、あっさりしていますよね。でも、私はこう思うのです。子育てとは、ひとつの「いのち」が、自立した「大人」になるまでを伴走する、人生で一番壮大なプロジェクトだ。ひとりの人間が、これからどんな人生を歩んでいくのか。その出発点を支える責任者が、パパとママの二人です。正直に告白すると、子どもが生まれたばかりの頃の私は、心のどこかでこんな愚痴をこぼしていました。「最近、ゲームをする時間がないなあ」と。でも、ある夜のこと。寝息を立てる子どもの顔をぼんやり眺めていて、ハッとしたのです。いま自分の目の前にあるのは、ひとりの人間の人生そのものなんだ、と。ゲームの1本や2本、いったいなんだろう。そう気づいたとき、肩がずしりと重くなりました。でも不思議と、その重さは、嫌なものではありませんでした。あなたの「父親」は、世界にひとり講座をしていると、いろんな相談が寄せられます。「妻にどう接していいかわからない」「自分は本当に父親に向いているのか」たぶん、あなたも1度くらい、似たようなことを感じたことがあるはずです。私もそうでした。でも、たったひとつだけ、確かなことがあります。あなたの子どもの「父親」は、世界中であなたしかいない。ママと出会い、愛し合い、授かった小さないのち。それを自立した大人に育て上げる「使命」が、私たちには委ねられている。この役は、誰にも代われません。まずやるべきは、「ママを笑顔にすること」子どもが健やかに育つために、いちばん大切なものは何だと思いますか?答えは、ずいぶんはっきりしています。「母親の笑顔」です。これは精神論ではなく、子育てに関する多くの研究で実証されていることです。つまり、私たち父親が最初にやるべきことは——ママがいつも笑顔でいられる環境をつくること。ママがニコニコしているなら、あなたの子育てはもう、すでにうまくいっています。逆に、ママがいつもイライラしているなら、その理由をそっと探ってみる必要があります。ママのこと、ちゃんと知っていますかそもそも、出産という人生最大の仕事を終えたママには、リスペクトしかありません。体中はボロボロ。ホルモンバランスは大きく崩れ、「産後うつ」になるママも、決して少なくありません。そんなママのイライラに、こちらまでイライラで返してしまう——これがいちばん、もったいない。イライラには、必ず理由があります。その理由を「学ぼうとする」だけで、家の空気は驚くほど変わっていきます。ちょっと衝撃の「女性の愛情曲線」ここで、少し衝撃的なお話をします。東レ経営研究所の渥美由喜さんが紹介して有名になった「女性の愛情曲線」というデータがあります。それによると——妊娠する前、ママの愛情はほとんどがパパに向いています。ところが妊娠から出産にかけて、ママは一気に「母親モード」へと切り替わり、赤ちゃんへの愛情がほぼ100%。パパへの愛情は……、ほぼ0%にまで下がってしまうのです。「最近、妻が冷たい気がする」そう感じているパパは、安心してください。あなただけじゃありません。ただし、誤解しないでほしいのは——ママは「冷たくなった」のではない、ということ。「彼女」だったあの人は、いま「母」になっただけ。変わったのは、ママではなく、家族のフェーズなのです。ここからが、運命の分かれ道「女性の愛情曲線」が、私たちに教えてくれることがあります。子育てがひと段落したあと、ママの愛情がパパに「戻ってくる」家庭と、「戻ってこない」家庭がある——ということです。何が、その差を分けるのか。出産直後のいちばん大変な時期に、パパがどう関わったか。正直、これを知ったとき、私もちょっと怖くなりました。でも、逆に言えば——いま、大変な時期の真っ最中にいる人ほど、未来を変えるチャンスを握っているということです。「察する力」は、仕事にも効いてくるママの様子を観察するのは大事——とは言うものの。「『怒ってる?』って聞いたら、『怒ってない!』って怒られた」そんな声、講座でもよく聞きます。ここで大切になるのは、言われなくても気づける力です。ちょっとした表情の変化、ため息の長さ、お皿を置く音。実はこの「察する力」、ビジネスでも大きな武器になります。チームメンバーの不調にいち早く気づけるリーダー、信頼されるリーダーの共通点は、まさにここにあります。家庭で磨いた共感力は、職場でも必ず役に立つ。家族のためにやっていることが、自分のキャリアにも返ってくる。これは案外、知られていないボーナスだと思います。育休は「休暇」ではなく「研修」最近は、男性で育児休業を取る人も、ずいぶん増えてきました。ただ、せっかく取ったのに「ただ家にいるだけ」になってしまい、「うちは長男がもうひとり増えただけだった」——そんなふうにママに言われてしまう、という話もよく耳にします。育休は、ゆっくり休むための時間ではありません。普段ママがひとりでやっていることを、丸ごと自分で引き受けてみる「研修」期間です。乳幼児の世話というのは、想像以上に頭を使います。ミルク、おむつ、寝かしつけ、洗濯、買い物、機嫌取り——同時進行で進む小さな判断の連続。東京都では、すでに「育児休暇」を「育業」と呼ぶようになりました。休みではなく、立派な「業」。ぜひ、ママに教わりながら、子育てを学ぶ時間にしてほしいと思います。「出産」と「母乳」以外、ぜんぶパパにもできるここで、もうひとつ大事なことをお伝えします。「出産」と「母乳」以外、子育てと家事のほぼすべては、パパにもできる。シンプルですが、揺るがない事実です。私たち父親は、無意識のどこかで「子育てや家事はママの仕事」と思い込んでいないでしょうか?「何か手伝おうか?」実はこの一言が、ママを少しずつイラつかせてしまうことがあります。「手伝う」という言葉には、「本来は君の仕事だけど」というニュアンスが、隠れているからです。「次、何やろうか?」「これ、俺やるね」ほんの少し、言葉を変えるだけで、伝わり方は大きく変わります。ワークライフバランスは、家ごとに違っていい「仕事と子育ての両立」を意味するワークライフバランス。最近よく聞く言葉ですし、私もその大切さに賛成です。ただ、現実には——飲食店を切り盛りしている、トラックで全国を走っている、単身赴任中、夜勤の多い仕事……。仕事の都合で、どうしても子育てが片方に偏らざるを得ない家庭も、たくさんあります。そこで私が一番大切にしたいのは、ワークライフバランスそのものよりも、「ママが納得しているかどうか」です。パパが仕事で家にいない時間、ママと子どもだけの食卓に、笑顔はあるでしょうか。もし、そこに笑顔がないなら——夫婦でじっくり話し合うタイミングが来ています。役割が偏ること自体は、悪いことではありません。ただ、その役割を「ママが納得して引き受けているか」で、家族の温度はまったく変わります。そして、パパが安心して仕事に打ち込めるのは、ママが家を守ってくれているから。このことへの感謝とリスペクトだけは、絶対に忘れないでいたいですね。ときには「転職」という選択も少し踏み込んだ話をします。あなたは、何のために働いていますか?「成果を出して評価されたい」「もっと稼いで、家族にいい暮らしをさせたい」私自身、まったく同じ気持ちで働いてきましたから、よくわかります。でも——もし、その働き方が「ママの笑顔」を奪っているのなら。もし、子どもが眠ったあとにしか帰れない日々が、何年も続いているなら。転職という選択肢を、テーブルに乗せてみるのも、立派な「子どものため」だと、私は思うのです。お金を出せば、家は買えます。けれど、一緒に住む「家族」だけは、お金では買えませんから。(もちろん、転職がすぐに現実的ではない時期もあります。その場合は、いまの仕事のなかで「ママが少しでもラクになる関わり方」を、夫婦で一緒に探すことが、最初の一歩になります。)「笑っている親」が、最高のキャリア教育子どもが将来、どんな人生を歩むのか。親なら、誰だって心配ですよね。でも、子どもは塾やドリルから「人生」を学ぶわけではありません。パパとママの背中から、「大人」を学ぶのです。毎日、パパとママが楽しそうに暮らしている。ときには喧嘩しても、また笑い合っている。そんな姿を見た子どもは、自然とこう思います。「大人って、楽しそう」「早く大人になりたい」これ以上のキャリア教育って、ないと思いませんか。変化の激しいこれからの時代を、ワクワクしながら歩いていける子に。そう願うなら——まず私たちが、ワクワクしながら毎日を歩く。「今日が、人生で一番若い日」なのですから。「男だってつらい」と思ったときここまで読んで、「ちょっと心が折れそうだな」と思ったパパもいるかもしれません。大丈夫です。最近の研究では、父親にも「産後うつ」があることがわかっています。初めての子育てに悩むのは、ママもパパも、同じなんです。では、悩めるパパはどうしたらいいか。答えは、シンプルです。パパ同士で、話すこと。呑み会でも、ランチでも、朝活でも、なんでもかまいません。「いやー、最近うちでこんなことがあってさ」「うちもうちも、わかるわかる」そんなふうに笑い合える場所があるかないかで、気持ちはまったく違ってきます。不思議なことに、ちょっとした愚痴を言いに集まったはずなのに、帰る頃には「もうちょっと家族にやさしくできそう」と思っている——「パパ会」って、そういう場なんです。名刺がいらない、いちばん本音で話せる異業種交流会。それが「パパ会」です。ファザーリングジャパン沖縄でも、そういう場をこれからも開いていきます。ひとりで抱え込みそうになったら、ぜひ覗きに来てください。最初は黙って座っているだけでも、ぜんぜん大丈夫ですから。最後に——「正解」は、子どもが教えてくれる最初に書いたとおり、子育てに「正解」はありません。RADWIMPSに『正解』という曲があります。「正解」を求めて悩む若者の歌ですが、私はあれを聴くたびに、子育てを思い出します。子育ての答え合わせをするのは、大人ではなく、子ども自身。私たちが授かった小さないのちが、健やかに育って、自分の足で人生を歩き出すまで——そっと支えていけたら、それでもう十分なのだと、私は思います。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。完璧なパパになる必要は、ありません。ママの笑顔を1日にひとつ増やせたら、それだけで今日のあなたは、最高の父親です。この文章が、ほんの少しでも、明日の家族の笑顔につながったなら。そして、よかったら——隣の席のパパに、ちょっと声をかけてみてください。「最近、子育てどう?」そこから、何かが始まるかもしれません。