「子どもが毎日食べられる身体にやさしいお菓子を作りたい」野崎美帆さんの作るお菓子には、ママたちが抱く「おやつへの罪悪感」をなくしたいという深い愛情が詰まっています。お菓子作りで起業の準備を進める野崎さん。自衛隊での調理経験を経て、4人の育児と転勤生活のなかで一度は諦めかけた夢を、沖縄での出会いをきっかけに再始動させた経緯をお聞きしています。置かれた環境をしなやかに受け入れ、自分らしい働き方を模索し続ける野崎さんの言葉は、挑戦を迷っている女性の背中をそっと押してくれます。「沖縄の食材で作る身体にやさしいお菓子」でママと子どもを笑顔に――現在はどんな活動をされていますか?野崎さん:身体にやさしいお菓子を作って地元のイベントなどで販売しています。おからと米粉を使ったグルテンフリーのドーナツのほか、シークヮーサーや島人参など、沖縄の旬の野菜や果物を取り入れたケーキも作っています。2025年の11月に活動を始めてから、ありがたいことに少しずつお仕事が広がっていきました。マルシェへの出店や、産後ケア事業で提供するお茶菓子作り、親子向けお菓子作り教室の講師など、さまざまな機会をいただいています。――数か月の間に活動の幅が広がっていますね。マルシェでの反応はいかがですか?野崎さん:味見しながら「おいしい」と言って買ってくださるお客さんが多いです。「身体にやさしいから子どもの朝ごはんにいいよね」「出産祝いの贈りものとして買いたい」という声もあり、ママと子どものためのお菓子を作れてうれしいです。自衛隊での食事作りがキャリアのスタート、結婚して子育てに専念する選択へ――お菓子作りで起業の準備を進めているようですが、もともと調理の経験があったのですか?野崎さん:高校卒業後は自衛隊に入隊して「給養」という食事を作る部署で働いていました。学生のときは「料理人になりたいのか、パティシエになりたいのか」夢が漠然としていて…。自衛隊ならお給料をもらいながら料理を学べて、将来やりたいことが決まったときに自分のお金で学校に行ける、と考えたんです。――自衛隊での調理経験が土台になっているのですね。そこからなぜ、お菓子の道へ?野崎さん:給養で2年働いた後、1年ほど秘書業務を経験しました。調理の現場を離れたことで「やっぱり私はお菓子を作りたい」と思えたんです。自分も甘いものが好きだし、作ったものを誰かに食べてもらって喜ぶ顔を見るとうれしい。自分の気持ちに改めて気づいた時期でした。その後、結婚して22歳で自衛隊を退職、念願だったケーキ屋さんに就職しました。でも、すぐに第一子を授かり数か月で退職することになります。自衛官の夫は2〜3年おきに転勤がある生活です。子育てと仕事を両立しながら転勤についていく自信が持てなくて…。大好きな仕事でしたが、一度お菓子作りを辞めて、しばらく子育てに専念する道を選びました。――子育てしながら、転勤生活が始まったのですね。野崎さん:そうですね。愛知、青森、沖縄へと引越しました。愛知で上の2人の年子育児、地元の青森で3人目を出産、沖縄で4人目が生まれたときは里帰りせずに夫婦二人で乗り切りました。ずっと心の中に「お菓子作りの仕事をしたい」という気持ちはあったんです。でも、日々の忙しさで、いつの間にか遠い夢になっていました。ママ友との出会いで「雇われずに起業する選択肢」を知る――子育てに専念していた時期を経て、どんなきっかけでお菓子作りを再開されたのでしょうか?野崎さん:きっかけは、沖縄で知り合ったママ友との出会いでした。農家とママをつなぐ活動をしていた彼女から「廃棄野菜を活かしてお菓子を作りたいけれど、私は苦手で…」と相談されたんです。「私、お菓子作りが好きだから、ぜひお手伝いさせて!」と迷いなく答えました。彼女との何気ない会話が、私の心に新しい風を吹き込んでくれたんです。――その後、どのように「起業」へとつながっていったのでしょうか。野崎さん:実際に作ったお菓子をママ友に食べてもらうと「こんなにおいしいドーナツを作れるなら、売ってみたら?」と提案してくれたんです。彼女の言葉に、私ははっとさせられました。それまでは「お菓子作りの仕事=どこかのお店に雇われて働くもの」だと思い込んでいました。でも、自分で仕事を始めれば時間の融通も利く。子育てしながら転勤を繰り返しても、お菓子作りを続けられるかもしれない。彼女の後押しで「自分でやってみよう」と起業の道へ進みました。――ママ友の言葉が固定観念を崩してくれたのですね。起業へ向けて、お菓子の開発は順調ですか?野崎さん:最近は、食用ハイビスカスの「ローゼル」と米粉を使ったスコーンを開発しています。子どもたちに毎日でも食べさせたい、おやつをあげる罪悪感がなくなるような、身体にやさしいお菓子を目指しています。――4人のお子さんを育てながらの商品開発は、時間の使い方も工夫が必要ですよね。野崎さん:正直、毎日バタバタです(笑)。長時間の作業はできないので、お皿を数枚洗ったら子どもに呼ばれて中断、なんてことが頻繁にあります。でも、子どもたちが正直な感想をくれるんです。失敗すると「おいしくない」と言われますが、うまくいったときの褒め言葉が励みになっています。とくに長男が「お母さんのお菓子が一番おいしい。外で買うケーキより好きだよ」と言ってくれるのは本当にうれしいですね。視野を広げて、今の自分ができることから始める――起業の準備を進めていると思いますが、今後の展望を教えてください。野崎さん:当面は週1回のペースでお菓子作りの活動を続けたいです。子育てしながら転勤が続くことを想定すると、店舗をもつカタチにこだわらず、自分が続けやすいスタイルで働きたいと考えています。もちろん「お菓子作り1本での自立」が目標ですが、すぐに収入が安定するわけではありません。お菓子作りと並行して在宅ワークにも挑戦したいと思い、昨年はSNS運用の講座で学ぶ機会もありました。講座で教わった知識は自分の商品の発信にも役立っています。そして、新しいスキルとしてクライアントワークにもつなげていきたいです。――「どこでも働けるスキル」を少しずつ身につけているのですね。最後に、子育てや環境の変化で働き方に悩む女性へメッセージをお願いします。野崎さん:以前の私は「自分はお菓子を作ることしかできない」「起業なんて無理」と思い込んでいました。パソコンも苦手で「お菓子作りを発信して事業にする」という発想すらなかったんです。でも、ママ友との出会いで視野を広げてみたら「今の自分にできる範囲で始めてもいいんだ」と気がつきました。たとえ自分にできないことがあっても、誰かに教わればできるようになります。働き方に悩んでいるなら、少し考え方を変えてみるといいかもしれません。また、何でも一気にやろうせず、少しずつ進めることを意識しています。家事も仕事も、小さなタスクを一つひとつこなしていき「この作業を終わらせたから、次の作業も大丈夫」と小さな自信につなげています。今は育児と仕事の両立が大変でも、数年後には「あの頃は必死だったね」と笑いながら話せる日が必ずきます。やってみたいことに挑戦して、自分のペースで夢をカタチにしていきましょう。――野崎さん、本日はありがとうございました。■野崎美帆さんのInstagramはこちら