子育てと仕事の両立に悩みながらも、パート勤務、副業、フリーランス、法人経営へと働き方を変えてきた仲本紫織さん。少しずつ事業を育てていきながら、ひとりで抱え込まずにチームで仕事をシェアする働き方を確立してきました。「女性が多様な働き方で活躍できる社会をつくりたい」という想いで歩んできた道のりと、今後の目標をお聞きしています。キャリアに悩む女性へのメッセージを最後までご覧ください。起業から7年で法人化、在宅ワークを仕組みで支える――現在の働き方や仕事内容を教えてください。仲本さん:2025年の1月に個人事業主から法人化しました。「合同会社Port(ポート)」(以下、Port)では、人手不足の企業と在宅で働きたい女性をつなぎ、支え合う環境づくりをサポートしています。沖縄を拠点に活動する女性フリーランスのワークシェアコミュニティ「OFNE(オフネ)」※を運営しながら、「Port」で受けた仕事を「OFNE」のメンバーで分け合う仕組みです。私の主な仕事は「OFNE」の運営やスキルアップ講座の講師、企業への営業、打ち合わせ、マニュアル作成、作業者の募集、ディレクターとの進捗確認です。自社と夫の会社の経理もやりながら、個人で受注した印刷物の作成やナレーションの仕事もやっています。※「OFNE(オフネ/Okinawa Freelancewomen's NEtwork)」――日々さまざまな業務があるなかで、特にやりがいを感じる仕事はどんな部分ですか?仲本さん:忙しい毎日を送っていますが、業務の切り分けやマニュアル整理は私の得意な仕事です。クライアントの困りごとをヒアリングして、在宅ワークを仕組み化する部分にやりがいを感じています。「どんな環境に整えたらみんなが働きやすいか」を考える時間が一番好きですね。これまでの知見を活かしながら、一つひとつのプロジェクトを仕組み化してディレクターに任せるまでが、私の役割です。パート勤務から手に職を、子育て中に芽生えた働き方への想い――現在の働き方に至るまで、どのような背景があったのでしょうか。仲本さん:20歳で沖縄に移住して、その後結婚を経て翌年には第1子を出産しました。若くして母になり、周りから心配されないよう「きちんとしなければ」という気持ちが強かったです。そして、2歳差で第2子、第3子を授かり、子どもたちを保育園に預けながらコンビニエンスストアや村役場で働きました。子どもが小さい頃は、保育園からの呼び出しや病院への付き添いも多かったので、子育てしながらパートタイムで働くスタイルがちょうどよかったです。高校時代にアルバイト経験が多かったので、仕事を覚えて臨機応変に動くことには慣れていました。その経験が子育てと仕事を両立するなかでも役立つ場面は多かったです。その後、子どもたちが小学生になり、時間がとれるようになって「このままパートタイムで働くのではなく、手に職をつけたい」と思うようになりました。2011年に起きた、東日本大震災が自分の生き方や働き方を見直すきっかけになったんです。当時勤めていた郵便局を辞めて、ハローワークの職業訓練で印刷物のデザインを学びました。――子育てと仕事の両立で、具体的にどんなことが大変でしたか?仲本さん:当時は車で片道1時間ほどかけて通勤していたので、帰りは渋滞に巻き込まれることも多かったです。保育園へのお迎えに間に合わせるため効率的に仕事を進めていました。でも、残業している他の社員の方が給料が高い。効率的に仕事をまわす社員が評価されない職場に疑問を感じていたのも事実です。そんな環境で「決まった時間や場所に縛られない働き方が必要だ」と思い、フリーランスを目指しました。副業からフリーランスへ、コミュニティ「OFNE」の立ち上げ――フリーランスを目指すと決めてから、どんなふうに動きましたか?仲本さん:すぐに会社を辞めるのではなく、まずは副業から始めました。夫にも相談して「月5万円を稼げるようになったら会社を辞めよう」と具体的な目標を決めたんです。本業や育児をしながら限られた時間で目標を達成するために、沖縄だけでなく東京の企業にもアプローチしました。履歴書を持参して、日帰りで数社と面接を行い、単価の高い仕事を少しずつ受注できるようになりました。当時は、今のようにオンラインでの面談が一般的ではなかったので、直接会うことで信頼してもらえるケースも多かったです。――県外まで足を運んだのですね。副業の時間はどのように確保していたのでしょうか?仲本さん:平日は仕事と家事を終えた後の夜の時間、そして休日に作業していました。わが家では、家事・育児は「夫婦で協力し合うもの」という考えです。私が忙しい時期は、夫が家事・育児の多くを担ってくれるので感謝しています。限られた時間で働く必要があったので「この時間でどれだけ成果を出せるか」を常に意識していました。仕事の進め方や段取りを工夫しながら経験を積み、少しずつ副業の比重を増やしていった形です。――副業の成果が出た後、ワークシェアコミュニティ「OFNE」を立ち上げたきっかけを教えてください。仲本さん:副業から始めて5カ月程度で目標収入の5万円を達成し、フリーランスになりました。仕事を続けるなかで案件の規模が大きくなり、ひとりでは対応しきれないと感じる場面が増えていたんです。特に、子どもが急に体調を崩したときなど「代わりに任せられる人がいない」ことへの不安は大きかったですね。ちょうどその頃、以前勤めていた印刷会社の同僚が、育休中に復職先を失ったと聞きました。スキルはあるのに働く場所がない。そんな状況を目の当たりにして、同じように悩む女性は他にもいるのではないかと思いました。2020年12月にOFNEを立ち上げ、まずは元同僚に声をかけて一緒に仕事を始めました。その後SNSで呼びかけると、在宅で働きたい女性たちから多くの反応があったんです。コロナ禍で在宅ワークの需要が高まっていたこともあり、企業から受けた仕事をチームで分担する働き方が、少しずつ整っていきました。世代を越えて支え合う、女性が多様に働ける環境づくり――個人事業主から法人化を経て、仕事との向き合い方や家族との過ごし方に変化はありましたか?仲本さん:事業が大きくなり法人化した今、仕事の幅や責任の広がりを感じています。現在の働き方で「いいな」と感じる部分は、家族と仕事を共有できることです。CMの撮影現場やワークショップに子どもが参加する機会もあり、年齢に応じて役割を任せています。5歳頃から「仕事は最後までやりきるぞ」という意識を自然と持つようになり、頼もしく感じています。夫も自営業で働いているため、家庭でも仕事の話を相談し合い、子どもたちの意見を聞く機会も多いです。仕事と生活を切り分けるのではなく、無理のない形で行き来できる今の暮らしが、自分たちに合っている。家族で仕事をつくっていく感覚が、働く喜びにつながっています。――法人として、個人として、今後の目標を聞かせてください。仲本さん:法人としては、これまで支えてきた子育て世代だけでなく、シニア世代にも働き方の選択肢を広げていきたいです。女性はライフステージによって悩みや課題が変わるもの。「年金収入だけでは生活が苦しい…」という相談も増えてきました。人材不足の企業と一緒に、さまざまな世代の女性が多様な働き方で活躍する環境を整えていきたい。パソコン作業だけでなく、働く人の体力や状況に合わせて、無理なく関われる仕事を増やしていきたいです。個人としては、仕事量を抑えて「9歳の末っ子と過ごす」「放送大学で学ぶ」「趣味の音楽活動」の時間を増やしたいと思っています。運動も習慣にして、引退後は「おばあちゃんバックパッカー」になることが夢なんです。――素敵な目標ですね。最後に、働き方に悩む女性へメッセージをお願いします。仲本さん:女性は、子育てや介護などで家族のことを優先して、自分の気持ちを後回しにしがちです。「子どもの手が離れたらやりたいことをやろう」と思っても、すぐに行動できるとは限りません。挑戦しようと思ったときに、健康ではない可能性もあります。自分がどう働きたいのか、どう生きたいのかを見つめる時間は大切です。大きな決断をしなくても大丈夫。たとえば「家で働きたい」という目標があるなら、まずは自分の気持ちを言葉にして、家族に話してみてほしいです。家族に想いが伝われば「週に1回はママが集中できる時間をつくろう」「パートナーや子どもが家事を分担する」などと、協力してもらえるかもしれません。「目標を叶えるために、今できる一歩は何か」を考えながら、自分らしい働き方・生き方を選んでほしい。子どもも、パートナーも、あなたの人生も一度きり。家族だけでなく自分のことも大切にして「やりたいことを叶えられた」と言える人生を歩んでほしいです。――仲本さん、貴重なお話をありがとうございました。■仲本紫織さんのinstagramはこちら■OFNEのサイトはこちら■「合同会社Port」のコーポレートサイトはこちら