多くの働く人が抱えるワークライフバランスの悩み。特に女性は、結婚・出産・子育て・介護など、人生の転機で使える時間のバランスが大きく変わります。「仕事を続けたいけれど、子どもとの時間も大切にしたい」 「興味のある仕事に挑戦したくても、勤務形態が合わず踏み出せない」 「キャリアアップを望んでも、今の家庭環境では難しい」そんな思いを抱える人は、少なくありません。しかし、人生のタイミングに合わせて働き方を変えていくことは可能です。そこに社会や会社の理解、家族の協力があれば、女性は仕事と生活のバランスを取りながら、より自分らしく働くことができるはずです。今回は、働く人としての“リアルな幸せ”をどう支えているのか。沖縄の塩づくりを守り続けるシママース本舗(株式会社青い海/以下、シママース本舗)で働く女性社員・金城さんに、現在の働き方と会社のサポート体制についてじっくりとお話を伺いました。“自分らしい働き方”を探してたどり着いた場所経営企画部 人事総務課で働く金城さんは、5歳の息子さんを育てるシングルマザーです。以前は栄養士として働いていましたが、結婚・出産を経て、働き方に悩むようになったと話します。金城さん: 栄養士の勤務形態が、ライフスタイルに合わなくなってしまったんです。台風の日も出勤があったり、早朝勤務も多く…。特にシングルマザーとして子どもをひとりで育てていくとなると、栄養士として勤務を続けるのは難しいと感じました。短時間勤務だと業務範囲が狭まり給与にも反映されてしまうので、一旦、栄養士からは離れようと決断しました。商業高校出身だったことから事務職を探していたときに出会ったのが、シママース本舗の求人でした。金城さん: 「シママース」は親の世代から愛用していました。SNSもフォローするほど大好きなので、求人を見つけた瞬間「ここに行きたい」と応募しました。特にフレックスタイム制に魅力を感じましたね。糸満市内では事務職でフレックス制度を導入している企業が少なかったので、勤務時間と休みを重視して入社を決めました。現在は9時出社で、フレキシブルに働いています。人事と採用を担当し、求人媒体の選定から掲載、応募者対応までを担当するなど、日々多岐にわたる業務をこなしています。「女性のため」ではなく、「みんなが働きやすい」会社へ創業51年を迎えるシママース本舗では、社員の約半数が女性です。女性が長く働きやすい職場づくりについて、取締役の屋嘉比さんに伺いました。屋嘉比さん: 当社では製造部門も含めて女性の割合が高く、長く勤めているベテラン従業員が多いです。これは、“女性に特別な制度を”というより、もともと自然と働きやすい環境ができてきた風土があるからだと考えています。働きやすい環境づくりの土台として、具体的な制度についても言及します。屋嘉比さん: 基本的に勤務時間は8時〜17時、土日祝日は休みで、製造側は残業もほぼありません。また、有給休暇も時間単位で取得できる制度を、昔から取り入れてきました。さらに、近年はコロナ禍をきっかけに、より柔軟な働き方を全従業員へ広げています。屋嘉比さん: 2023年ごろから、部署限定ではありますがフレックス制や在宅勤務を本格的に導入しました。導入後もパフォーマンスは全く落ちておらず、正直「もっと早くからやっておけばよかった」と感じるほどです。当社の売上の9割以上が県外で、先端の情報を取り入れやすかったことも、柔軟な働き方を導入できた要因のひとつかもしれません。入社後すぐに使える制度が、働く力になる入社から一年、金城さんはどのように仕事とプライベートのバランスを取っているのでしょうか。金城さん: 子どもの行事がある場合は、時間給を使って参加させてもらっています。時間の調整をして抜けさせてもらえる、相談しやすい環境があるのは本当にありがたいです。ライフステージの変化に合わせて、今後の働き方についても見据えています。金城さん: 今後、小学校入学のタイミングで子どもにとって大きな変化があるので、そこのケアをしっかりしていきたいと感じています。入学したてのころは短時間勤務などを使って乗り越えていきたいです。子どもの成長に合わせて、家での負担が減ってきたら仕事にシフトしていけたらいいなと考えています。シママース本舗には、法律で定められた産休・育休などの制度はもちろん、独自の支援制度も存在します。屋嘉比さん: 制度としては、フレックスタイム・時短勤務・有給休暇の時間単位取得、そして「クローバー休暇」があります。この「クローバー休暇」は、有給休暇とは別に、入社後すぐに取得できる休暇として7年ほど前に作られました。屋嘉比さん: 入社して半年以上経たないと有給が付与されないといった課題を解消するため、クローバー休暇を設けました。1日単位で取れるようになっています。金城さんも、この制度に助けられた経験があります。金城さん: 入社して間もないころ、子どもの熱が続いてしまいましたが、まだ有給が出ないタイミングでした。そんなときクローバー休暇を使わせてもらえ、とても助かりました。子どもが小さいうちはいつ体調を崩すかわからないので、入社後すぐに使える休暇があるのは、働く親にとって本当に心強いです。また、シママース本舗は有給取得率が7割以上と高いのも特徴です。屋嘉比さん: 有給休暇は1日単位で取っていく人が多いですね。また、来年度からは、繰越可能な有給休暇の上限日数を増やすことも検討しています。制度だけでなく、職場の文化も金城さんを支えています。金城さん: 事務職は子育て中の女性が多いので、子育てに関するちょっとした悩みも共有でき、理解があるのが本当に助かります。子どものために休むことへの罪悪感が減ったと感じています。会社の成長も、社員の成長も、地域のために女性のキャリアアップ支援については、ここ数年で改革が進められています。屋嘉比さん: 研修制度の導入や、資格取得の支援などを行っています。女性の管理職も適材適所で抜擢してきました。管理職の意識レベルを上げるための勉強会やリーダー研修も実施しており、性別関係なく社員がステップアップできる仕組みを強化しているところです。会社の根幹にあるのは、「地域社会のために」という強い想いです。屋嘉比さん: 創業のきっかけは、“沖縄の塩づくりを守りたい”という強い想いですが、原点は「沖縄のために、地域社会のために」にあります。すべての企業活動がそこにつながっているからこそ、サステナブルな経営ができていて、会社と従業員と地域が「ウィンウィンウィン」の関係になれると思っています。それを従業員の人たちに感じてもらい、「働きがい」に繋がればいいですね。「踏み出す勇気」が、新しい道を開く最後に金城さんに、“あのときの自分に伝えたいこと”を聞いてみました。金城さん: 私は栄養士免許を持っているから、栄養士として働かなければと自分で思い込んでいました。でも、そこを一歩踏み出して栄養士をやめようと決断したことは、本当に大きな転機でした。職業に固定概念を持ってしまう人って多いと思いますが、意外と踏み出してみるといい出会いやタイミングがあって、自分とマッチする場所は必ずあります。恐れずに踏み出すことって大切だと実感しています。シママース本舗は、社員が「自分らしく働ける環境」をつくるうえで、柔軟な働き方を重視しています。屋嘉比さん: 柔軟な働き方ができる会社でありたいです。そして、当社で働いていることを「自分にとってよかった」と思ってもらえる企業になりたいです。それが働きがいにつながり、会社と地域、全てが良い循環を生み出すと考えています。働く環境を整える会社のサポートと、自らの可能性を信じて一歩を踏み出す勇気。シママース本舗は、その両輪で、社員のしなやかなキャリアを支える場所でした。